新感覚コラム『&Artist(アンド アーティスト)』
目黒区に実在するCafeスタジオ「らんすみれ」を舞台に、オーナーの「僕」とアーティストたちが繰り広げる物語、『&Artist』。「らんすみれ」と「僕」はホンモノですが、コラム内のストーリーや写真はフィクションです。ぜひ、この新しい新感覚コラムをお楽しみください。・一覧はこちらから
・第1話 様変わりするCafe
・第2話 一見さんお断りのCafeスタジオ
・第3話 アーティストの卵
・第4話 せめて1枚!
・第5話 本物に震える
・第6話 動くモデル
・第7話 未体験ゾーンへ!
僕が若干21才で飛び込んだアパレルの世界では、当時も今もCool!と言われるブランドを担当し、ファッションが好きで好きでたまらなかった。
パタンナーとして入った自分のアトリエの同じ部署ながら『???』な “一画” があった。ショップに並ぶ服とは明らかに違う不思議な造形を作り出す異様なセクション、そこはショーの服を作る部署だった。
(こんな服で街を歩ける訳無いだろ…ショーで見せるならみんなが着たいと思う様なもっと普通のにしろよ..こんなの見せてどうするんだ…?)
そんな “幼稚” な自分が納得、理解するのは意外な世界からだった。
僕には当時、ファッションと同じくらい情熱を傾けていたモノに「クルマ」があった。自分の愛車のチューニング&サーキット走行、そして「F1」と言うモータースポーツ最高峰スポーツの観戦が至福の時だった。
「F1」で応援するチーム、そのメーカーの市販車を当然僕は買った。スポーツタイプと言えどもそこは市販車、「F1」の様なクルマにいくらカスタマイズを施してもそれに “化ける” 訳は無い(あたりまえだが)。
しかし、カスタマイズと言う”ハード行為”と同時に「同じメーカー、スピリッツ」を共有することに「所有する喜び」を感じてしまったのだ。そのチームとそのドライバーがライバルと激しいバトルの末、チェッカーフラッグを受ける瞬間。
そう、このカッコいい、大好きなブランドを「僕も共有してるんだ!」という感覚がたまらなかった。その経験をしたことで、ファッションショーの意味を理解した。ショーに登場するそのものの服はブランドのイメージを売るためのものなのだ。
ご存知の方もいるだろうか。パリコレでヨーロッパの人々にショックを与えた『黒の衝撃!』、パリコレと言う彼らの文化の『ルールを壊してしまった東洋の襲来!』と、約30年ほど前に日本人がパリを騒がせたことがあった。僕はあの時の物語を鮮明に覚えている。
そのブランドの服を所有することは、パリコレの物語を一緒に着ていることを意味する。僕の大好きなクルマに例えるなら、既製服は市販車、パリコレは憧れるレースの騎士だ。
歴史を重ねながら挑戦し続けるブランド、クルマ。人々はそういうブランドに心惹かれるものがあるのではないかと思っている。
サクラ。
君が望むなら、ファッション雑誌やショーのオリジナルのデザインを手掛けることになる。君がこれまで美容師としてそうしてきたように、一般のお客様ヘアメイクを手がける訳ではない。
さぁ、どうする?
第9話へつづく。
「Cafe らんすみれ」も「僕」も実在しますが、物語や写真はフィクションです。引き続き、「Cafe らんすみれ」に没頭する「僕」や、作品作りに没頭するアーティストたちの、新感覚コラム『&Artist』をお楽しみください。
企画/tocco,文/kou
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