新感覚コラム『&Artist(アンド アーティスト)』
目黒区に実在するCafeスタジオ「らんすみれ」を舞台に、オーナーの「僕」とアーティストたちが繰り広げる物語、『&Artist』。「らんすみれ」と「僕」はホンモノですが、コラム内のストーリーや写真はフィクションです。ぜひ、この新しい新感覚コラムをお楽しみください。・一覧はこちらから
・第1話 様変わりするCafe
・第2話 一見さんお断りのCafeスタジオ
・第3話 アーティストの卵
■前回までのお話
鎌倉の美容院で働くサクラたちが、はじめての「作品撮り」のために、Cafeスタジオ「らんすみれ」へやってきた。学生の文化祭のようなノリの彼女たちは、時間経過とともに1人、2人と飽きていく。その中で1人頑張っていたのがサクラだ。
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サクラちゃん…..
(もう、ヘア、ばらばらだよ…)
(メイクも…)
「終わったらどこでご飯食べよう」「駐車場料金、いくらになっちゃってるかな」
みんなの興味の対象はそちらに移っているようだ。
モデルには”睡魔”が襲ってきている。寝転んでるポージングなのか、本当に寝てしまっているのか。もちろん、モデルもプロではない。美容院にきてくれている常連さんらしい。
サクラ一人、倒れてしまったケガ人に必死で話しかけるような姿で、
「**みたいな表情できる?」
「あそこに飛んでる蝶々を取る様なポーズできる?」
「寝たまんまで良いから、楽しい夢見てる様な表情だけできる?」
“とりあえずカメラ係”から奪ったカメラでサクラ一人、慣れないシャッターを切る。一応一眼レフのようだが、古いモデルのようで、重く、なかなかピントが合わずに苦労をしている。おそらく、一眼レフカメラを使い慣れていない彼女には、まだコンパクトデジタルカメラを使った方が綺麗に撮れただろう。
彼女は、「残したい!1枚で良いから!」と言っているように見えた。
僕は、少し離れたところで、みんなを見ていた。モデルのヘアメイクは崩れてきているし、顔も疲れてきている。サクラはカメラに悪戦苦闘しながら、モデルに気を使いながら指示出しをしている。相手はプロのモデルではないので、指示を出しても要領を得ない様子だ。
しかし、サクラも完璧な仕上がりイメージがあるわけではないようで、しっくりこないモデルにどのようなお願いをしたらいいのか、わからないようにみえる。ただ、ひたすらシャッターを切っている。
後ろの方では、スマホをいじりはじめたメンバーたちが談笑している。
とても作品撮りなんて人には言えないレベルだ。でも、今日、何かを始めた記録をサクラは残したい。その気持ちは、僕には伝わってきた。
そして、彼女はこのメンバーからいずれ、離れて行く。
さあ、準備するか。
見せよう、サクラがショックを受けるほどの「本物の現場」を。
第5話へつづく。
「Cafe らんすみれ」も「僕」も実在しますが、物語や写真はフィクションです。引き続き、「Cafe らんすみれ」に没頭する「僕」や、作品作りに没頭するアーティストたちの、新感覚コラム『&Artist』をお楽しみください。
企画/tocco,文/kou
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