新感覚コラム『&Artist(アンド アーティスト)』
目黒区に実在するCafeスタジオ「らんすみれ」を舞台に、オーナーの「僕」とアーティストたちが繰り広げる物語、『&Artist』。「らんすみれ」と「僕」はホンモノですが、コラム内のストーリーや写真はフィクションです。ぜひ、この新しい新感覚コラムをお楽しみください。・一覧はこちらから
・第1話 様変わりするCafe
・第2話 一見さんお断りのCafeスタジオ
・第3話 アーティストの卵
・第4話 せめて1枚!
・第5話 本物に震える
■前回までのお話
プロの「作品撮り」の経験がない美容師サクラのために、らんすみれのオーナー「僕」が、本物の現場を見せるよう段取りを組んだ。プロの現場にやってきたサクラは驚きの連続。
「おはようございます!」
マネージャーらしき女性は、日本語が分からないだろうおぼしき、一緒にやって来た白人の少女の代わりに大きな声で明るく振る舞った。
その”生きたフランス人形” の様なモデルにスタッフ一人ひとりが簡単な挨拶を交わした後、ヘアメイクと本日のディレクションを担当する町田くんは、早速モデルにカタコトの英語を交え”絵コンテ”にして来た本日のストーリーを丁寧に伝え始めた。
モデルはAga(アガ)と言う名前らしい。
その光景を遠目から見ていた、サクラの目にはどの様に写っているのだろう。想像するに次のように考えていただろう。
(えっ!16才?カワイイ表情、仕草とは裏腹に何て大人っぽいの?スタイルはまるでバービー人形みたい )
(2人は今、何を話してるの?モデルさんって指定の衣装とヘアメイクが完成したら、フォトグラファーの注文通りポージングをし素敵な笑顔でカメラに微笑むんじゃ無かったっけ..)
(モデルさん、言葉は分からない様だけど、町田さんの絵コンテとジェスチャーにいちいち大きくうなずいてる。2人は確か初対面のはず..)
5分ほど説明は続いただろうか。いきなりAgaは親指を立て、笑顔で「OK」と!
(何が分かったと言うの?)
今回の衣装に “被り” になるモノは無いため早速、ヘアメイクから始まった。
*ヘアメイクの後に首から被らなければならない衣装の場合は、せっかく作り込んだヘアメイクがダメになってしまう…
まさに”オリジナル” この作品のためだけに作られる “非日常” なヘアメイク。海外帰りのクリエイターにありがちと聞いてたスピードとは違う。町田くんは、綺麗な人形を慈しむ様に丁寧にていねいに、時間をかけて作り上げて行く。
どちらが”良い”とかの問題では無く、それぞれの作品撮りへの取り組むスタンスの問題だろう。
着替えも終え、パウダールームから出て来たその人形のようなモデル。
(凄い..スゴい..ホントに…こんなの海外のコレクションで見るもの..自分の世界にはありえない..でも、目の前に..いる..)
サクラの目には、店に入って来た、あのあどけない”フランス人形”からは考えられない、近づくことも憚れる、強烈な「遠い存在」に彼女はなってしまった様だ。
所定の位置にAgaが立ちフォトグラファーの指示の通りポーズを撮りながらカメラテストが始まった。ヘアメイクの町田くんとスタイリストが衣装の微調整に走りいよいよ、本番がスタートする。
(えっ!?)
(フォトグラファー..指示は!?)
(うそっ!)
Agaが!!「先」に動き始めた!
第7話へつづく。
「Cafe らんすみれ」も「僕」も実在しますが、物語や写真はフィクションです。引き続き、「Cafe らんすみれ」に没頭する「僕」や、作品作りに没頭するアーティストたちの、新感覚コラム『&Artist』をお楽しみください。
企画/tocco,文/kou
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