僕とうどんと海辺のカフカ【美味口福を読む8】

日本三大うどんといえば、「讃岐」、「稲庭」そして…「水沢」だと思っていたが、実は第三のうどんは確証が得られていないそうだ。

名古屋のきしめん、長崎の五島、富山の氷見も候補らしい。それぞれの地元に住んでいたらきっと、うどん愛でいっぱいであろう。そして、日本三大うどんに入りたいという県民のプライドでひしめき合っているのではないだろうか。どの地域のうどんも甲乙付けがたく美味しいのだが…。

さて、うどんの魅力は…「麺のコシ」、「風味豊かなつゆ」、「トッピングとの相性」など人それぞれ好みで相違しそうだが、これらの絶妙なバランスが三位一体となって人々を魅了している。

2002年に発行された、世界的に有名な村上春樹の長編小説のひとつ『海辺のカフカ』にもうどんが登場する。15歳になったばかりの少年が主人公で家出を通じて、様々な体験をし成長を遂げていくストーリー。舞台は四国の香川県高松市である。

夜行バスで高松まで来た少年カフカ。作中には彼が食べたものが多く描写されている。ソーダクラッカー、いちごジャムのサンドイッチ、チキンカツレツ定食と野菜サラダ…どれも美味しそうであるが…一番感情移入出来たのが、香川県民のソウルフードの讃岐うどんである。

”「駅の近くにあるうどん屋に入って腹ごしらえをする。見まわしてたまたま目についたところにある入っただけだ。僕は東京で生まれ育ったから、うどんというものをほとんど食べたことがない。しかしそれは僕がこれまでに食べたどんなうどんともちがっている。腰が強く、新鮮で、だしも香ばしい。値段もびっくりするくらい安い。あまりにうまかったのでおかわりをする。」”

 

讃岐うどんの特徴は、イリコ(煮干)で取った出汁を使った、薄めのだし汁をうどんにかけ、刻みねぎ、しょうがおろし、天かす、薄切りの板かまぼこを載せることが多い。想像するだけでよだれが出る。主人公のカフカがすっかりとりこになった讃岐うどんの味。シンプルでも奥深いその味を堪能するカフカ。

この本を読んでいると、高松で本場のうどんを食べに行きたいという衝動にかられてしまうだろう。これほど、リーズナブルなのに人々の食欲を刺激し、お腹と心を満たす食べ物は他には見当たらない。

2013年に「和食」が世界無形文化遺産に登録されて、和食が世界中の人たちに高く評価されていることを再確認できた。その後、日本食のレストランが海外に軒並みオープンされている調査結果もある。

農林水産省の発表によると、平成27年7月時点で、平成25年1月時点の1.6倍に相当する約8万9千店存在することが判明された。今後も数を増やしていくのではなかろうか。その中にも日本のうどんを提供する店やうどん専門店も多く含まれているであろう。

ハワイでは日本で人気のうどん専門店に常にその味を求め、長蛇の列が出来ているそうだ。1時間待ちも普通らしい。このように、日本食が世界中を席巻していることに日本人として誇りに思う。

カフカは世界でいちばんタフな15歳。彼の成長する過程と彼をとりまく環境、個性的な登場人物たち、そして香川の讃岐うどんがストーリーをより盛り上げている。「海辺のカフカ」を読んで讃岐うどんを脳内で堪能してみよう。

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

 

【連載:美味口福を読む】
本に登場する料理やスイーツを、食べてみたいと思ったことはないだろうか。また、その作品を生み出した文豪や物書きたちはグルメであることも多く、そう聞くと彼らは何を口にしていたのか気になるだろう。そんな「本とグルメ」をテーマにお贈りするのが、連載【美味口福を読む】。想像力を働かせながら、美味しい1ページを読んでみよう。

文/cloud9
経歴:ラジオ局勤務、空港職員、IT関係、フードコーディネーター職などを経て現在は主にフリーライターとして邁進中。好きなことは、食べ歩き、旅行、料理、大相撲観戦、パワースポット巡り。好奇心旺盛でおっとりマイペースなタイプ。

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